呼吸回数って何に役立ってるの?
後輩
「ヌゥさん」
ヌゥ
「あら?どうしたの?」
後輩
「私、最近呼吸回数測定してるんですよ」
ヌゥ
「そうなの?偉いじゃない」
後輩
「それで、今までしばらく呼吸回数測定していて感じたことなんですけど」
ヌゥ
「うんうん」
後輩
「これで何がわかるようになったのか、何に役だってるのか、全然わかりません」
ヌゥ
「え?」
後輩
「呼吸回数を測定するのって何の意味があるんです?」
ヌゥ
「あれ?伝えてなかったっけ?」
後輩
「なんか”呼吸回数が多い患者はヤバい”っていうのを漠然としか言われてない気がします」
ヌゥ
「え~・・・そうだっけ?」
後輩
「ヌゥさんが伝えていたつもりでも相手に伝わってなかったら一緒だと思います」
ヌゥ
「ん~、敗血症の事を言ったときにqSOFAスコアってのあったじゃない?」
後輩
「qSOFA・・・なんか聞いたことありますね」
ヌゥ
「いや、貴方に何回も言ってるからねこれ。qSOFAスコアは感染症が予測される患者に用いるもので、3項目中2項目満たすとスコアが陽性になるんだったじゃない?」
qSOFA
のうち2項目該当で陽性
後輩
「そうでしたね」
ヌゥ
「つまり、感染症が予測される患者に対しては呼吸回数を測定することが敗血症の予測をすることに繋がると」
後輩
「なるほど、つまり呼吸回数測定は感染症患者の評価に役立つと」
ヌゥ
「そうそう、そして感染症患者の評価だけじゃなくて全身性炎症反応症候群(SIRS)の予測も出来る」
後輩
「・・・なんですか?全身炎症?」
ヌゥ
「俗に言うSIRSね。2016年の敗血症ガイドラインが出る前、つまりqSOFAが出現するまではこれが敗血症の予測に使われていたりしたのよ」
SIRS
のうち2項目該当で陽性
後輩
「・・・じゃあ、結局感染症の評価ってことですか?」
ヌゥ
「ところがギッチョン」
後輩
「・・・ぎっちょん?」
ヌゥ
「SIRSは“侵襲があった際に出現する全身反応”を認識するための考え方なのよ」
後輩
「・・・はぁ」
ヌゥ
「外傷とか手術とかでも引き起こされるのよね」
後輩
「つまり、身体に何らかのストレスがかかったら出現する全身の反応って事ですか?」
ヌゥ
「そうそう。ざっくり言うと身体になんか良くない事が起きてるって事ね」
後輩
「・・・呼吸回数を測定していれば身体にストレスがかかってる状態の予想が出来るって事ですか?感染症・非感染症に限らず」
ヌゥ
「まぁ、呼吸回数だけでその辺は決まってるわけじゃないけどね。でも呼吸回数はSIRSの中の項目の1つを担う立派なバイタルサインよ」
後輩
「なるほど、って事はヌゥさんは毎回この項目で患者評価をしてるんですね」
ヌゥ
「そうね、一つの指標にはなるわね」
後輩
「あれ、でもこれよく見たらSIRSの項目って割とすぐに該当しちゃいませんか?」
ヌゥ
「あら、よく気づいたわね。そうなのよ、発熱した患者の脈拍が90回より上で該当するし、呼吸回数が20回より上でも該当するのよね」
後輩
「呼吸回数測定してて思ったんですけど、20回は結構いますよ」
ヌゥ
「そうなのよね」
後輩
「・・・ぎっちょん」
ヌゥ
「なんで今言ったの?」
後輩
「SIRSを指標にするとほとんどの患者さんが引っかかっちゃいませんか?」
ヌゥ
「そうなのよ。そもそも、入院患者って事を考えれば身体に何かしらのストレスはかかってるでしょうしね」
後輩
「それじゃあんまり役に立たなそうな気もしますね」
ヌゥ
「まぁ、それでも普段SIRS陽性じゃない患者が陽性になってれば何かしら起きてないかって疑うきっかけになるし、やっぱり普段との比較が重要になるよね」
後輩
「普段との比較・・・」
ヌゥ
「呼吸回数って文献によって正常の範囲に幅があってあんまり統一されていないのよね。だから、患者評価の指標設定されている回数(SIRSなら20回、qSOFAなら22回)を認識出来る様になったら、次は患者の普段の呼吸回数がどのくらいかを意識してみるのも良いんじゃない?普段からせっかく呼吸回数測定するようになったんだし」
後輩
「なるほど、そういう考え方をするのか」
ヌゥ
「慣れてきたらもう少し踏み込んだ呼吸回数の評価を教えるよ」
後輩
「ぎっちょん」
ヌゥ
「いや、だから使い方違うよ?」