振り返り?吊し上げ?
後輩
「はぁ・・・」
ヌゥ
「ん、どしたの?」
後輩
「ヌゥさん・・・私もう看護師やめます」
ヌゥ
「そう・・・まぁ残念だけど仕方ないね」
後輩
「なんてあっさりとした返事!もっと引き止めるとか無いんですか」
ヌゥ
「いや、だって貴方の人生は貴方が決めるんでしょうよ。別に、看護師免許持ってる人が必ず看護師やらなきゃいけない決まりもないし」
後輩
「むむむ」
ヌゥ
「それに貴方の人生に口出しても、最終的には責任とれないし」
後輩
「何でですか!良いじゃ無いですか、口出してきてくださいよ!そんで責任とってくださいよ」
ヌゥ
「いやだよ。自分のことは自分で決めなさいよ」
後輩
「くっ・・・じゃあ、せめて何でやめようと思ったか理由を聞いてくださいよ」
ヌゥ
「はいはい・・・で、何かあったの?」
後輩
「それがですね。この間ヌゥさんがいないときに急変があったんですよ」
ヌゥ
「そうらしいわね。色々バタバタしてたみたいね」
後輩
「そのときその患者を受け持ってたの私なんですけど、息苦しさと胸痛を訴えたんで12誘導心電図をとらないといけないと思って医師に報告して準備してたんです。」
ヌゥ
「ふむふむ」
後輩
「それで準備しているうちにどんどん調子が悪くなっていったみたいで、そのまま意識レベルがガクッと下がったんです」
ヌゥ
「あら、そうなの?それは大変な瞬間を目の当たりにしたわね」
後輩
「そしたらちょうどそこに先輩方が来て、『スタッフコール押さないで何やってんの!?』って言われたんですよ」
ヌゥ
「あら・・・?スタッフコール押さなかったの?」
後輩
「いや、その場で状態が何段階も悪化したのなんて私にもわかりましたよ。スタッフコールのことも頭をよぎりましたし・・・。ただ、ちょうど患者のレベルが悪化したタイミングで先輩方が来たから、私がこのレベルの患者に対して心電図をチンタラとってるように見えたらしくて」
ヌゥ
「なるほど・・・」
後輩
「その後、対応が一段落した後の振り返りと称した吊し上げがホントに最悪でしたよ。師長・副師長クラスに囲まれて『なんでスタッフコール押さなかったんだ』『もっと早く対応できたはずだ』云々かんぬん」
ヌゥ
「そうだったのね・・・それはまぁ大変だったわね」
後輩
「かといって具体的にどこが悪くて改善できたのかを明確に伝えてくれる人はいないし……あの人たちの振り返りからは結局『状況はよくわからないけど急変した患者に心電図をタラタラとってたお前は悪い』って事しか伝わってこなかったです」
ヌゥ
「あらあら・・・まぁそれはやる気もなくなるわね」
後輩
「なので私看護師やめます」
ヌゥ
「達者でね」
後輩
「な~ん~で~、止~め~て~よ~」
ヌゥ
「アンタうるさいわね。結局どうしたいの?」
後輩
「私だって自分が至らぬところがあった自覚はあるんですよ」
ヌゥ
「ふむ・・・それで?」
後輩
「出来ればどこが悪かったのかを一緒に考えてほしいです」
ヌゥ
「わかった。じゃあちょっと振り返ってみようか」
後輩
「・・・はい」
ヌゥ
「・・・あら?泣いてるの?」
後輩
「……泣いてね~よ、バ~カ」