ざっくりな血液ガス③
ヌゥ
「前回でもう血液ガスは読めるようになったよね」
後輩
「いや、さすがにちょっとまだ無理があるような・・・」
ヌゥ
「え、そう?じゃあpHが7.3の患者がいます」
後輩
「はい」
ヌゥ
「これは酸性?アルカリ性?」
後輩
「pH7.4より数値が低いんで酸性ですね。アシドーシスですか?」
ヌゥ
「そうそう、じゃあPaCO2が60mmHgだったとすると、この人は呼吸と代謝どっちが原因でアシドーシスになったでしょう?」
後輩
「・・・PaCO2が基準値より大きいから、呼吸が原因?」
ヌゥ
「そう、呼吸性アシドーシスね。読めたね」
後輩
「はぁ・・・」
ヌゥ
「ちなみにPaCO2が25mmHgだったら?」
後輩
「基準値より小さいから代謝が原因?」
ヌゥ
「そう、代謝性アシドーシスね。読めたね」
後輩
「・・・・」
ヌゥ
「じゃあこの患者のpHが7.5だとして、PaCO2が25mmHgだったら、なんちゃら性なんちゃらーシスでしょう?」
後輩
「・・・呼吸性アルカローシス?」
ヌゥ
「そう、呼吸性アルカローシスだね。読めたね」
後輩
「・・・」
ヌゥ
「じゃあこの患者のpHが7.5だとして、PaCO2が60mmHgだったら、なんちゃら性なんちゃらーシス?」
後輩
「・・・代謝性アルカローシス」
ヌゥ
「そう、代謝性アルカローシスだね。読めたね」
後輩
「なんか馬鹿にされてる気がするんですけど?」
ヌゥ
「なんで?」
後輩
「こんな簡単に読めるわけないじゃないですか?」
ヌゥ
「だって、今自分で答えてたじゃない」
後輩
「いや、そもそもpHとPaCO2しか見てませんよ?なんかもっとありませんでしたっけ?HCO3-とか」
ヌゥ
「む、バレたか。HCO3-も使います」
後輩
「なんだよ、結局かよ」
ヌゥ
「でも、まだ教えません」
後輩
「・・・は?なんで?」
ヌゥ
「この先にいくとちょっとだけ出てきます。
後輩
「まだ何かあるんですか?」
ヌゥ
「さて、血液ガスのなんちゃら性なんちゃらーシスがわかるようになったところで・・・」
後輩
「はい」
ヌゥ
「だから何?って感じしない?」
後輩
「・・・え?」
ヌゥ
「だって、貴方も一応読めるようになったわけじゃない?それが何に役に立つかって事を考えていかなきゃいけない訳よ」
後輩
「はぁ・・・確かに私が血液ガスが読めるようになったと仮定して、何が変わったんでしょうか?」
ヌゥ
「そう、そこを考えないと血液ガスが読めたところで自己満でしかないと思わない?特に私たち看護師は診断出来るわけじゃないし。……というわけで、ここでクイズ!頻呼吸で考えられる血液ガスの異常は何があるでしょう?」
後輩
「頻呼吸って事は呼吸の回数が多い。ということは空気の入れ替えが激しいと考えると、酸素を多く取り込んで二酸化炭素を多く排出する」
ヌゥ
「お、すごい。そうすると、PaCO2はどうなる?」
後輩
「・・・とすると、二酸化炭素が多く排出されるわけだから正常よりもCO2が減ると考えられる?」
ヌゥ
「お、すごい。その状態で、もしアルカローシスだったらって考えると?」
後輩
「・・・二酸化炭素が多く排出されてるわけだから、CO2が減ってる事を踏まえたアルカローシスだと・・・呼吸性アルカローシス?」
ヌゥ
「そうそう、すごいね。じゃあ、もしアシドーシスだったら?」
後輩
「もしアシドーシスなら・・・CO2が減ってる事を踏まえると、正常値より低いって事は代謝性アシドーシス?」
ヌゥ
「そうそう」
後輩
「・・・で、これがなんなんですか?」
ヌゥ
「いや、今CO2の増減を踏まえてなんちゃら性なんちゃらーシスを予測してたけど、実際に血液ガスを測定したわけじゃないよね?」
後輩
「はぁ」
ヌゥ
「つまり血液ガスを測定しなくても、患者の状態の予測をつけることが出来ているってことね。すごいね」
後輩
「・・・これ、すごいんですか?」
ヌゥ
「だって、この前までは呼吸回数を単純に回数で区切ってqSOFAやSIRSを活用するしか武器がなかったわけじゃない?それが今じゃ頻呼吸を見たらアシドーシスやアルカローシスの予測が出来るようになった訳よ?」
後輩
「・・・」
ヌゥ
「すごいわね。無敵ね」
後輩
「いや、無敵ではないでしょうよ」
ヌゥ
「でも、だいぶ患者評価に幅が出たでしょう?」
後輩
「・・・そうですか?」
ヌゥ
「まぁ、とは言っても結局はこの間言ってた頻呼吸で考えられる4病態のことを再確認しただけなんだけどね」
後輩
「・・・え?」
参考文献
『世界でいちばん簡単に血ガスがわかる、使いこなせる本』
『竜馬先生の血液ガス白熱講座150分』