脱水の所見②
後輩
「ってことは、口腔粘膜と腋窩の乾燥具合さえ見ておけばいいんですね」
ヌゥ
「いや、違うのよ。こういう話すると『〇〇は有用でその他は価値なし』みたいな二元論になりがちなんだけどそういうわけではないの」
後輩
「はぁ……(二元論?)」
ヌゥ
「例えば、目元が窪んでるって患者家族が言って連れてきた高齢者が脱水だったこともあるらしい(『高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス』13章 脱水 参照」
後輩
「ほぉ、それは家族が凄いですね」
ヌゥ
「毎日顔を見ている家族が訴える『何か変』を安易に否定してはいけない、って医師の注意すべき点として挙げている本もあるくらいだしね(特に小児で言えば母親の訴え)」
後輩
「看護師も医師より患者の所にいる時間は長いんだからそんな扱いしてもらえるといいですよね」
ヌゥ
「ん〜まぁ、その看護師が『本当に自分の家族をみるのと同じくらいの意識で患者と接している』のが認めてもらえる程の日々の業務態度だったらそう感じてもらえるんじゃない?」
後輩
「…………」
ヌゥ
「…………」
後輩
「…………」
ヌゥ
「…………ちなみに、さっき言った『落ち窪んだ目』みたいな顔の事をヒポクラテス顔貌っていうらしいよ」
後輩
「……ヒポポタマス」
ヌゥ
「そりゃカバだね」
後輩
「陸上最強の動物と呼び声高い……」
ヌゥ
「だから、そりゃカバだって」
後輩
「私はシロクマを推しますが」
ヌゥ
「何の話?まぁ、私達看護師は家族よりも患者の近くにいる時間は少ないかもしれないけど、患者を観察する技術はある(と言うか無ければならない)わけだから注意するべき所見を多く知っておく事は悪い事じゃないよね」
後輩
「質問があります」
ヌゥ
「はい、なんですか?」
後輩
「口腔粘膜の乾燥って口呼吸してる患者とかもなりそうですけど、区別がし難くありませんか?」
ヌゥ
「確かに口腔粘膜の乾燥ってだけだと口呼吸しがちな私でも乾燥してることがあるからね。ただ、そんな私でも舌に縦皺が入るなんて事はないから舌にそんな所見があったら脱水を疑ってもいいんじゃない?」
後輩
「フムフム」
ヌゥ
「あと、唇側の歯肉が乾燥してたら脱水が考えられるってサパイラ先生が言ってるわ」
後輩
「はぁ……まぁ確かに唇の内側がピッタリくっついて歯肉が乾燥してたらヤバそうですね」
ヌゥ
「でしょ?」
後輩
「腋窩の乾燥ってのは?何処からが乾燥で何処からが違うのかがわかり難くないですか?」
ヌゥ
「それこそ自分の腋窩を触ってみなさいよ。貴方自身は今脱水じゃないだろうから、その感触を覚えておいて患者の評価に活かせばいいんじゃない?」
後輩
「ふむ(サワサワサワサワ)」
ヌゥ
「いや、別に今やらなくてもいいよ?」
後輩
「なんか汗ばんでますね」
ヌゥ
「報告もいらないよ?」
後輩
「先輩と話してるせいでしょうか?」
ヌゥ
「……ん?どういう意味?」