傾眠へアプローチした結果
この事例はフィクションです。
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17時頃……
スタッフ
「なんか患者 Aが変なんです。傾眠っぽいと言うか動作が緩慢で……でも会話し始めれば凄い多弁だし……」
医師
「……せん妄かな」(診察へ)
という会話が聞こえてきました。
せん妄にしちゃ時間が早いような気がするけど……まぁ夕方といえば夕方か(※②せん妄は夕方以降に多い)
でも意識障害疑いをすぐにせん妄で片付けるのはちょっと早計なんじゃないかしら?
もしかしたら他に原因があるのかもしれない。
酸素投与もしててモニターもついてる患者だし、ちょっと気にかけておくかな。
まぁ、医師が診察しに行ったし、とりあえずは自分の仕事やるか。
しばらく後……
なんか患者 Aのコール(離床センサー作動)が多いな、ちょっと行ってみるか。
スタッフ
「あ、 患者Aさんですか?私、コール行くんで大丈夫ですよ」
私
「…… Aさんコール多くない?」
スタッフ
「結局せん妄って事でリスペリドン飲んでもらいました」
ふ〜ん、せん妄だったんだ。
……
……
…….
……一応カルテの確認しておくか。
医師の診察では、脳血管障害の所見が無いか確認してるな。(FAST所見確認)一通り陰性か。
バイタルサインも夕方の記録では凄い落ち着いてる(いつも通り呼吸回数は記録無い)
血圧も高くないし、脳血管系は否定されたみたいだな(※④、⑤脳血管障害は収縮期血圧が高いことが多い)
むしろ、せん妄とするにはバイタルが落ち着きすぎてる気もするけど(※③せん妄は交感神経系が優位(興奮)になる)
まぁでも医師が診察したんだから取り急ぎ問題があるわけじゃなかったんだろう。
明け方……
夜を通してあんまりセンサー鳴らなくなったから患者Aさん大人しく寝られたんだろうな。
……お?とか言ってたら早速患者Aさんのセンサーが鳴った。
対応ついでにちょっと様子見てくるかな。
ん〜………
………
………(PEARSの第一印象発動)
動作が緩慢で声かけの反応に乏しい。
顔色はあんまり変化なさそう。
呼吸が8回〜10回くらいかな?
……遅くね?
これは……一次評価が必要ですね。
(PEARS一次評価発動)
ふむ、極端に状態が不安定ってわけじゃなさそうだな。
となると、意識障害へのアプローチがいるか。(※④意識障害のアプローチ10の鉄則)
まず、PEARSの一次評価でABCの安定と低血糖は否定した。
瞳孔も問題無し。
バイタルサインから敗血症らしくはない(qSOFA)
徐呼吸があるから二酸化炭素が溜まってるのはありえそう。(※③高二酸化炭素だと傾眠へ)
羽ばたき振戦はある(※③代謝産物(二酸化炭素、アンモニアなど)が溜まると羽ばたき振戦が出る)
脳血管障害は一回否定されたけどまた評価してみて……前回評価と同じような所見。
薬剤の影響はリスペリドン飲んだからありえる……けど12時間近く経ってるってことは認識しておく。
傾眠傾向なのに冷汗かいてる(※①冷汗は交感神経興奮を示唆する)
色々踏まえると、意識レベルと呼吸に異常があるから医師に連絡しよう。
徐呼吸が原因で二酸化炭素の蓄積が起こり傾眠傾向になってるって感じかな。
ただ、徐呼吸の原因がわからない。
薬剤の可能性もあるけど果たして……
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私
「って感じなんですけど、こんな時間ですが採血とかを早めにやるのはどうでしょう?」
医師
「ん〜まぁ採血と血液ガスとりますかね」
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結果……
……
……
……
……血液ガス、採血問題無し。
問題無いんかい‼︎
そしたら逆に変じゃない!?
なんでこんな状態なのよ?
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このように、学んだ事を活かそうとして私が一人で騒いで医師にプレゼンした結果、
何も無い事が多かったりします。
どう思います(笑)?
引用・参考文献
①『高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス』
②『身体診察免許皆伝』
③『バイタルサインからの臨床診断』
④『あなたも名医!意識障害』
⑤『すぐに動ける!急変対応の基本』