バイタルサインのポイント 台本①
勉強会資料はこれを改変して使用する
一般病棟への緊急入院の依頼
患者A 65歳男性 腹痛あり
外来でのバイタル
体温38.8度 血圧150/60
心拍数110回 呼吸回数25回 SpO2 96%
会話は可能、寒気あり
さて、この患者の入院を取ることになったあなた。この情報からこの患者を評価してみましょう。
まず、数分間くらい自分で考えてみましょう。
評価?なにをどうするの?と、イメージしにくい人は、ナースコールが鳴って訪室すると患者がこんな状態だった(バイタルは自分で測定した)として患者評価をしてみるというように自分がイメージしやすい患者の状態評価の場面を考えてみましょう。
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さて、そろそろ時間です。では考えられたところまでで良いので、今度は周囲の人と数分話し合ってみましょう。
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どうでしょうか?
この患者をどう評価しますか?
なんとなくヤバそうですか?
……
……
……
どちらかといえば、なんとなくヤバそうですかね。
では、『なんとなくヤバそう』から『なんとなく』をとるにはどう考えたらいいか、患者評価を一緒にやっていきましょう。
まず、なぜ皆さんがヤバそうと感じるのか?
多分、現状の情報から考えるとバイタルサインが正常から逸脱しているからではないでしょうか?
この事例のように、急に発症した症状とともにバイタルサインの異常があった場合はヤバい。と考えて下さい。
これで、急に発症した症状がありバイタルの正常からの逸脱がある。
だから『ヤバい』と言葉にする事が出来ました。
では、なぜこの患者はそのヤバいのかを更に深めていきましょう。
血圧・脈拍から見ていきます。
まず、血圧は収縮期血圧が上昇しています。
身体の中で何が作用するとこうなるのでしょうか。
ヒントは血圧が低い時に使う薬です。
そう、カテコラミンですね。
昇圧剤としてカテコラミンが使われるのと同じように、身体からもカテコラミンは放出されます。
カテコラミンが作用すれば昇圧剤と同じような働きが起こるので血圧の上昇と脈拍の増加が起きます。
これを『カテコラミンリリース』とここでは呼びます。
要は何らかの原因のせいで身体がストレスを感じてカテコラミンを出す反応をしたという事です。
では、何が原因なのか?
カテコラミンリリースでは原因となる代表的な5病態があります。
①呼吸不全
②循環不全
③発熱
④低血糖
⑤運動・痛み・不安
です。
今回の事例ではどうでしょうか?
①は今のバイタルだけで言うと頻呼吸が気になりますが、SpO2 は96%なので低酸素にはなっていなさそうです。
②は会話が可能だとの事で意識レベルの低下はなさそうです。つまり、脳の虚血には至ってませんし、血圧の低下も見られません。
③は38度超えの発熱が起きているので原因として考えられます。
④は今の情報からでは判断できません。
⑤は腹痛があるので原因としては考えられます。
整理すると、考えられるのは③と⑤ですね。
次に、脈拍を見てみましょう。
脈拍でポイントとなるのは
「体温が約1度上がると脈拍が約20程度増加する」
という事です。(正確には体温が0.55上昇すると脈拍が10上昇する)
これより脈拍が上昇していると、『比較的頻脈』として判断します。
比較的頻脈の場合は敗血症の可能性があります。
さて、事例を見てみましょう。
この患者は平熱がわかりませんが、そういう場合は平熱は36.5とします。
さて、38.8度から36.5度を引くと2.3になります。(38.8-36.5=2.3)
先ほどのポイントを踏まえると体温が2度上昇すると脈拍は40程度上昇する計算になりますね。
脈拍を正常値(60回~85回)で代用すると
60~85 + 40 = 100~125
脈拍は100~125回であれば体温の上昇具合と一致します。
この事例の場合は脈拍が110回なので範囲内ですね。
体温と脈拍の関係で説明できる範囲の時に考えられるのは体温上昇によるカテコラミンリリースです。
まとめると、発熱が原因で血圧が上昇している事が考えられ、脈拍も踏まえると感染症の可能性が高まります。
こうなると、感染症の可能性は高そうですね。
ここからは次の評価に移ります。
つづく