呼吸回数測ろうぜ⑥
あご
「お待たせしました。次こそ胸部の聴診よ」
まつげ
「いや、もう大丈夫です。こうなったら聴診器を使わないで所見を取り続けましょう」
あご
「・・・あなたってそういうひねくれてる所あるわよね」
まつげ
「そうですか?」
あご
「そうよ、あなた自分のこと嫌いな人にはすごい寄っていくでしょ?あれもひねくれてるからでしょ?」
まつげ
「いや、あれは「この人アタシのこと嫌いってことは、アタシに寄って来られたら不快だろうな~。・・・よし、寄って行こう」っていう素直な気持ちですよ」
あご
「何それ、陰湿すぎない⁉︎」
まつげ
「いや、でもそうするとたまに、向こうが態度を改めてよく接してくるようになるんですよ」
あご
「あ、そうなの?それはいいわね」
まつげ
「そうなっちゃったらもうこっちのものですね。こっちからはもう寄っていかずに冷たくします」
あご
「怖すぎない?あなた、普段からそんなに手の込んだ復讐してるの?」
まつげ
「やられたらやり返す・・・倍返しだ!!」
あご
「少し古くない?まぁいいわ、次は聴診器を使って胸の空気の入り具合と音の評価に入りますよ」
まつげ
「学生の時からやってるフィジカルアセスメントですね」
あご
「まぁそうね。『フィジカルアセスメント』っていう単語に感じるものがあるけどまぁいいわ」
まつげ
「奥歯の詰め物が取れたみたいな言い方しますね」
あご
「「奥歯にものが挟まった」じゃないの?それただの虫歯よ?」
まつげ
「あとは肺音の有無ですよね」
あご
「そうね、割りと躍起になって「これは○○音だ」みたいにいう人もいるけど、臨床ではとりあえず有るか無いかが判断できればいいんじゃ無いかしら?」
まつげ
「そうなんですか?」
あご
「いや、そりゃちゃんと判別できたほうがいいとは思うけど、呼吸回数測定しないような看護師が聴診の異常音から何かをアセスメントするって考えにくいわ」
まつげ
「お、案外敵を作りそうな発言しますね」
あご
「いい?集めた情報は記録を書くためじゃなくて患者に何が起こってるかを判断するために使うのよ?」
まつげ
「はぁ」
あご
「レモンを手に入れたらレモネードを作る努力をするの」
まつげ
「なんですかそれ?」
あご
「ドラッカーの言葉よ」
まつげ
「・・・残念ながらそれはカーネギーでは?」
あご
「・・・」
まつげ
「・・・しかも微妙に使いどころが違うと思います」
あご
「・・・あなた嫌いだわ」
まつげ
「お、なんですか?そう言われると寄っていきますよ」
あご
「・・・」
・・・つづく