学生実習
あご
「どうしたの?なんかイライラしてない?」
まつげ
「いや、今看護学生の実習担当なんですけど、ひどいんですよ。「これ〇〇までにやってきて」って言ったところを期日までにやってこないんですよ?普通やってきません?しかも、少し指摘すると担当教員に「最近の若い子たちは怒られる事に慣れてないんであんまり厳しく言わないでください」って言われるんですよ」
あご
「へ~」
まつげ
「厳しく言うなだと?こちとら今までにその何倍も厳しく言われてきたんだぞ!アタシが少し指摘したぐらいで泣くやつなんかいるかよ」
あご
「いや、あなた結構怖いわよ」
まつげ
「いや、だってムカつきません?なんかこっちばっかり悪者にされてる感じじゃないですか?じゃあ記録が何もできてなくても黙ってればいいんですか?」
あご
「あぁ、それやってみたら?」
まつげ
「いや、できるわけないじゃないですか」
あご
「まぁまぁ、学生さん達だってまだ実習に慣れてないだけかもしれないし、体調が悪いとか睡眠時間が少ないとか何かしら理由があるかもしれないじゃない?あなたにだってそんな覚えあるでしょ?」
まつげ
「やめてくださいよ、あんな黒歴史、もう一生思い出したくないです」
あご
「……自分で話振っておいてなんだけど、そんなに大変だったの?」
まつげ
「大変なんてもんじゃないですよ!思い出したくないですけど、あの時の担当看護師の顔は絶対に忘れません。今もどこかで自分より下の立場の人をいじめて楽しんでるんですよきっと」
あご
「へ~、そんな人いるんだ」
まつげ
「いますよ!当日の予定を聞いてもらおうと思って話かけたら『今忙しいんだけど』って言われたからその人目で追いながら待ってたんですよ。そしたらサーッと患者さんの部屋に行って清拭始めたから『見学させてください』って言ったら『あなたが今日清拭を見学したいことなんて知らなかったから見学させられません。そもそも、今日の予定聞いてないんだから私何もさせてあげられません』ってめっちゃ睨まれて言われたんですよ?」
あご
「あら~それはそれは」
まつげ
「お前にいつ予定言える隙があったんだよ!!って思いましたよ。しかも、あの威圧感!これが“覇王色の覇気”かって思いましたよ」
あご
「覇王色の覇気?」
まつげ
「知らないんですか?『ONE PIECE』ですよ」
あご
「私『ONE PIECE』読んでないから」
まつげ
「え?『ONE PIECE』読んでない人間なんているんですか?」
あご
「いや、そりゃいるでしょ?結構いるんじゃない?」
まつげ
「いやいや、みんな普通読んでますよ」
あご
「いやいや、あなたの言う「普通」が私にとっての「普通」に当てはまるかどうかは別じゃない?」
まつげ
「・・・いや、まぁそれは確かに」
あご
「例えば、学生さんが期日内に言われたことやってこないのだって、実習に直接必要のない提出物とかだったら「普通」やってこないかもしれないわよ?」
まつげ
「なんですか?私がやってこいって言ったことが実習に必要ないって言うんですか?」
あご
「そんなこと言ってないでしょ?ただ自分にとっての「普通」と他人にとっての「普通」は違うことがあるってことよ」
まつげ
「・・・そんなの屁理屈ですよ。じゃあどうすればいいんですか?」
あご
「ん~、まぁ私も答えがわかるわけじゃないから難しいわね。一緒に考えてみるか」
まつげ
「お手並み拝見といこうか」
あご
「ようやく元気になったわね、腹立つけど」
実習生
「すみません、午後の実習予定をお伝えしても・・・」
まつげ
「今忙しいんだけど!!」
あご
「いや、あなた昔の担当と同じじゃん。せめて自分がやられて嫌だったことはやめなさいよ。負の連鎖よ?」
・・・つづく?