学生実習②
あご
「まずは何から考えましょうかね」
まつげ
「でも意外でした」
あご
「なにが?」
まつげ
「あご先輩は割と現場の看護師寄りの考え方してくれると思ってたけど、学生寄りの考え方なんですね」
あご
「え?そんな事ないでしょ?」
まつげ
「いや、だって学生に気を使えみたいなこと言ってるじゃないですか」
あご
「ん~、気を使ってやれっていうか……まぁ当たり前じゃない?だって、人間教えられて無い事を初めてやってうまくやるのなんて難しくない?」
まつげ
「……え?例えば?」
あご
「そうねぇ、例えば報告の方法とか学生の時に教えられた事無いんじゃない?」
まつげ
「あ~……そうかもしれませんね」
あご
「それなのに実習では学生が看護師に報告しないとじゃない?「〇〇さんの血圧が~脈が~体温が~」って」
まつげ
「そうですね」
あご
「それで看護師に「それで?」って言われてフリーズして萎縮しちゃって、その後は負の連鎖で実習うまくいかなくなっちゃうってこともあり得るでしょ?」
まつげ
「まぁ、実習あるあるですけど、でも看護師側からすればただバイタル聞かされても……」
あご
「いや、だって普段の看護師だって熱が出たら「先生~熱が出ました」とか言ってるだけでしょ?何も違わなくない?」
まつげ
「ほら、やっぱり看護師より学生の味方じゃないですか!」
あご
「いや、そういうことじゃないのよ。確かに今のは不快な例えだったかもしれないけどね。なんにせよ、学生に「バイタルだけ報告してくるんじゃねえ」っていう態度をとる看護師は少なからずいるんだから、教員はその対策をすべきなんじゃないかって思うわけ」
まつげ
「教員?対策?」
あご
「例えば、学生にはSOAPとかSBARとか何か報告のツールを使って報告をさせる練習を実習前にやらせる。それで、指導看護師には「学生がSOAPを使って報告してくるのでうまく使えてるか評価してください」って伝えてくれれば看護師もどこを評価すればいいかわかるじゃない?」
まつげ
「ん~まぁ、その例えで言えばそうですけど」
あご
「もっと教員と指導看護師は関係を密に持つべきだと思うのよね。まぁ私は教員やったことがないから詳しいことはわからないけど、現場との事前の打ち合わせが足りなすぎるんだと思うわよ?」
まつげ
「……確かに事前の打ち合わせなんてほとんどないような」
あご
「でしょ?実習の目標も割と抽象的じゃない?例えば『円滑なコミュニケーションを行い、良好な関係を築くことができる』って感じのがよくあると思うけど、この目標に必要なスキルは果たして学校で指導してもらえてるのかしらね?」
まつげ
「ん~、どうですかね。傾聴とかですか?」
あご
「そうね、それも一つだろうけど教えてもらえなかったらわからないじゃない?学校と病院の事前の準備が足りないんじゃないかなって思うのよね~」
まつげ
「準備ですか……」
あご
「そう、例えば事前学習として指導看護師が指定した内容のことをやってきてもらうとかすれば実習中の指導も評価もしやすいと思わない?うちの病棟実習ではこの知識使いますよって言って知識のスタートラインを一緒にしちゃうのよ」
まつげ
「ほえ~」
あご
「どこまでやればいいか、どこまで評価すればいいかが明確じゃないと、あなたみたいな真面目な看護師があれもこれも教えてあげようと頑張りすぎちゃって学生もキャパ超えて双方にメリットのない事態になっちゃうのよ。お互いが頑張ってるのに悲しすぎない?」
まつげ
「……結局あご先輩はどっちの味方なんですか?」
あご
「別にどっちの味方でもないわよ?強いて言えば、学生・看護師双方のためになってない事を知りながら「私たちの頃はもっと~~」とか言って現状を変えようともしないお年を召した方々に不快な想いを持っているだけ」
まつげ
「それだいぶ嫌味に聞こえますよ」
あご
「自分達が経験した嫌なことを後輩達には経験させないように変えていくことが先人達の役割でしょう?それを何も変えようとしないくせにお年を召したからって若者に意見していいと思っている方々のなんと多いことか!」
まつげ
「やべ、変なスイッチ入った」
・・・つづく?