ざっくり血液ガス⑥
ヌゥ
「頻呼吸の4病態ってなんだっけ?」
後輩
「①低酸素、②高CO2、③代謝性アシドーシスの代償、④呼吸中枢の興奮でしたよね」
ヌゥ
「おぉ、それで①の低酸素にはいくつか分類があるんだけど・・・」
後輩
「次から次へと・・・いっぺんに全部言ってくれれば良いのに」
ヌゥ
「だって、あんまり小難しいと聞く気失せるとか言ってたじゃない」
後輩
「すでに小難しさは感じてますけどね」
ヌゥ
「・・・。
①の低酸素には
a.低酸素血症、
b.ヘモグロビン低値、
c.循環不全、
e.酸素利用障害
と大きく分けてさらに4つある」
後輩
「うへぇ」
ヌゥ
「この4つの内、血液ガスでわかるのはa.低酸素血症、b.ヘモグロビン低値ね。血液ガスを測定するとPaO2とかヘモグロビン値がわかるから」
後輩
「他の2つは?」
ヌゥ
「c.循環不全は血圧と脈拍の評価で予測は出来るでしょ?d.酸素利用障害って例えば敗血症とかで起こることなんだけど、これはSIRSやqSOFAスコアで予測できる」
後輩
「つまり、血液ガスとバイタルサインを組み合わせれば低酸素に関しては大方予測が出来る・・・と言いたいわけですか?」
ヌゥ
「まぁ、実際の臨床でこんなにきれいに分類できる事は少ないかもしれないけどね」
後輩
「・・・とすると、ここまで学んできた内容を活用していけば、バイタルと血液ガスの知識から患者評価に幅が出るといいたいわけですね」
ヌゥ
「そうそう、だから知っておいて損は無い知識だったでしょ」
後輩
「ん~・・・でも血液ガスってICUとかERなら結構測定するのかも知れないですけど、私たちみたいな一般病棟じゃあんまり見ないじゃないですか?」
ヌゥ
「そうね。だから頻呼吸や他のバイタルから状態を予測するのよ。「血液ガスをとればこんな病態になってそうだな?それを裏付ける情報は・・・これか?」みたいに情報を集めたり、先の介入を予測して医師に報告したり」
後輩
「ふむ・・・」
ヌゥ
「ちなみに頻呼吸の4つの病態の中の③代謝性アシドーシスの代償は血液ガスで判断できるでしょ?それ以外の②高CO2と④呼吸中枢の興奮は意識レベルで予測できる」
後輩
「意識レベル?」
ヌゥ
「④呼吸中枢の興奮はそのまま意識レベル的には興奮に分類される。代謝産物のCO2が溜まると意識は傾眠になることを踏まえると、②高CO2だったら患者が傾眠傾向になる。意識レベルは見た目や会話で判断できるから、まず評価しちゃっても良いし」
後輩
「あぁ、なんか昔聞いた“第一印象”的な?」
ヌゥ
「お、すごい!そうなのよ。ここで学んだことや昔学んだことをそれぞれで活用するんじゃなくて、今みたいに学んだことにつながりを持たせて活用すると患者評価がもっと興味深くなってくる」
後輩
「へ、へぇ・・・」
ヌゥ
「なんで引いてるのよ」
後輩
「まぁでも結局はアシドーシスかアルカローシスかは血液ガスをとらないと判断できないって事ですよね?そう考えると、4病態の①、④と③は区別するのは難しくないですか?」
ヌゥ
「まぁ区別する必要性にもよるけど、一応アタリをつけようと思えば出来る・・・とされている」
後輩
「えっ?どうやってですか?」
ヌゥ
「低酸素とか換気不全とか呼吸器系の病変を示唆するのって浅くて早い呼吸(浅速呼吸)になりがちなのよ」
後輩
「ふむふむ」
ヌゥ
「でも③代謝性アシドーシスの代償の場合の呼吸って大きくて速い呼吸なのよね。これがいわゆるKussmaul呼吸なんだけど・・・」
後輩
「でた~!臨床のどこで使うのかよくわからないままなんとなく覚えさせられた名前のやつ。こんな所で出てくるんですね」
ヌゥ
「疑問が解けて良かったわね」
後輩
「“大きくて速い呼吸”みたいな表現を『普通の呼吸じゃないのか?深呼吸っぽいのか?』みたいにずっと感じてたんですよ」
ヌゥ
「理屈で言えば1回換気量を増やしてCO2を捨てる量を増やすから大きくて早い呼吸って事になるね」
後輩
「いや~、“呼吸のパターンを見る”と言われて、”こんな呼吸のリズムがあります“ってただ羅列されるよりしっくりきますね」
ヌゥ
「まぁ正確にアシドーシスアルカローシスを判断するにはやっぱり血液ガスが必要なんだけどね」
後輩
「なるほどなるほど、いや~すっきり」
ヌゥ
「・・・ちょっと、聞いてる?」
参考文献
血液ガスについて
『世界でいちばん簡単に血ガスがわかる、使いこなせる』
『竜馬先生の血液ガス白熱講座150分』
“頻呼吸の4病態”について
『レジデントノート 血液ガスを各科でフレンドリーに使いこなす』
レジデントノート 2018年7月 Vol.20 No.6 血液ガスを各科でフレンドリーに使いこなす!〜得られた値をどう読むか?病態を掴みとるためのコツをベストティーチャーが教えます!
- 発売日: 2018/06/11
- メディア: 単行本
『バイタルサインからの臨床診断』