ショックに絡めて考えると?:呼吸回数が重要なことを考える為の基礎知識
さて、前回はエネルギー産生の代謝について説明しました。
なぜこんなことをやったのか?
それは、この辺を理解しておくと、ショックの理解を助けてくれるからです。(と私は思っています)
ショックとは「酸素の需要と供給のバランスが崩れて、組織低酸素状態になること」です。
これを踏まえて考えると、ショックは嫌気性代謝しまくってる(嫌気性代謝でエネルギーを保持せざるをえない)状態です。
なので乳酸も大いに産生されてしまいます。
そして、今までは好気性代謝をすることで問題無かったエネルギーの量が、嫌気性代謝しか出来ないので減ってきます。
エネルギーが減ると身体は働きません。
その結果、それぞれの臓器で機能不全が出現します。
それぞれの臓器に必要な量の酸素が供給されない為、臓器の働きに問題が出てくるのです。
なので、ざっくり言うとショックに対する介入は
「外呼吸・内呼吸のなかで障害が起きている部分(酸素の供給不足が生じている部分)を認識し、そこへの酸素供給を改善させる事が目的」
となります。
例えば・・・
・何かしらの呼吸器系の問題で取り込む空気(酸素)の量が低下しているなら呼吸器系に介入する(酸素投与や必要なら気道確保、補助換気)
・酸素を運ぶ赤血球(ヘモグロビン)が少ないなら輸血をする
・赤血球は充分だけどそれを運ぶ血流が維持出来ていない(血圧低下)なら補液や昇圧剤(血流を強くする介入)をする
といった感じです。
ところで、乳酸と言えば・・・私のブログの過去の記事のどこかに乳酸が出てきたことがありましたね。
・・・
・・・
・・・
そうです。敗血症のところです。
敗血症の治療開始6時間以内に達成する目標として
乳酸値4mmol/Lより高ければ速やかに下げる(循環不全を改善するために昇圧剤や補液を使用する)
となっていました。
敗血症に関しては詳しく書こうとすると膨大な知識が必要になるのですが
(そもそも私には知識不足で書けない)
今までのことをふまえて敗血症のことを考えると、
「全身が酸素不足で嫌気性代謝が多くなり乳酸が多量に作られるから乳酸が上昇する」
・・・となりそうですよね。
ところが、どういうわけか違うようです。
驚きですよね。組織低酸素が理由で乳酸の酸性が増えるから乳酸が上昇するわけではないようです。
どうやら細胞内のミトコンドリアの酸素使用障害に関連しているらしいのですが、
詳しいことは私もまだ把握できていません。(興味があればご自身でお調べください。そして私に教えてください(笑))
まぁ乳酸に関してもまだまだわかっていないことが多いみたいですが、
とりあえず、通常のショックにしても敗血症にしても
「乳酸が高いと予後が良くない」
ということは言えるそうです。
それにしても、
「ショック」というのは通常末梢が冷えるの(Cold shock)に敗血症では末梢が温かくなったり(Warm shock)、
通常の乳酸上昇の機序とは異なる乳酸上昇の機序が敗血症では考えられたり、
なかなかやっかいですね。
まとめ
ショックの患者がいたら、外呼吸・内呼吸のどこに障害が(酸素の供給不足が)起きているかを把握して、そこに介入できるように患者評価をする。
エネルギー産生の代謝を理解し、病態の理解に繋げる(応用する)。
敗血症はやっかい。