第一印象覚えようぜ⑤
あご
「「第一印象」はこの3つ、意識(外観)、呼吸、皮膚色(循環)で構成されているんだけど」
まつげ
「割と簡単な内容ですね」
あご
「まぁ最初の数秒でやる評価だからね」
まつげ
「これさえ見ておけばバッチリってことですね」
あご
「正しく評価できれば、患者が危ないか危なくないかはとりあえず評価できると思うよ」
まつげ
「なんかもっとすごいこと教えられるのかと思ってましたけど」
あご
「おや?私はこれ結構すごいことだと思ったけど」
まつげ
「そうですか?」
あご
「だって患者とのファーストコンタクトの中で、多くの人がなんとなくやってたであろう観察項目を言語化してくれてるのよ?」
まつげ
「はぁ・・・」
あご
「なんて気のない返事。例えば、あなた患者さんの所に行ったらまず何を見るっていちいち決めてから行ってる?」
まつげ
「そりゃ、『この患者はこの疾患でこの治療してるから副作用はここに注意して』って考えながらまわってますよ」
あご
「まぁ、なんて偉い」
まつげ
「え、むしろそんな考え持たないでまわってる看護師なんかいるんですか?」
あご
「いいね~、そういう攻めてる質問好きよ」
まつげ
「いや、攻めてるも何も先輩方から「やれ」って言われたからやるようになっただけなんですけど」
あご
「そうだよね、でも上は自分が出来てるか出来てないかに関わらず理想を押しつけてくるからね」
まつげ
「そうなんですか?」
あご
「そうよ、それに上が言ってくることを全部正しいと思わない方が良いわよ。あの人達、昔の知識で指導してくることなんてざらにあるんだから」
まつげ
「あの人達って・・・、私から見たらあご先輩も上の人たちに入るんですけど」
あご
「確かに!だから情報は全部自分で考えて選び取れるようにしなきゃ駄目よ」
まつげ
「それ、難しいんですけど」
あご
「まぁ確かに、いっぱいチャレンジしてみて失敗しないと身につかないかもしれないね。話を戻すと、まつげさんみたいにしっかり観察項目を絞ってラウンドしてる看護師もこの「第一印象」っていうツールを覚えておいて損はないはずよ」
まつげ
「確かに、この「第一印象」って要は人間の生命を維持するのに重要になる部分をまず評価するって事ですもんね」
あご
「そう、すごい。良い勘してるわね。とりあえず、患者が生命の危機に瀕していないかを評価する。これが「第一印象」よ」
まつげ
「まぁ言われてみれば、漠然と「患者を評価しました」って言われるより「第一印象を使って患者を評価しました」って言われた方がどう評価したのかがはっきりするかも……でも、これって「第一印象」を知ってる人に言うからこそ伝わる評価じゃないですか?」
あご
「そうね~、でも「第一印象」を知らない相手には意識・呼吸・皮膚色をそれぞれ言葉で説明すればいいし。そもそも、この「相手に伝える」って行為自体は、相手が「第一印象」を知ってても知らなくても同じ単語を使って説明すればあんまり関係ないと思わない?」
まつげ
「なるほど、確かに相手が第一印象を知ってても知らなくても、相手に伝えるときにはレベルと呼吸と皮膚色を伝えればなんとなく生命に直結した状態はわかりそうってことですね?」
あご
「そうそう、だからそれを踏まえて状態が危なそうってことを伝えても『?』ってなってる医療者は勘が鈍いわ。」
まつげ
「つまり、使えないってことですね」
あご
「そこまで言わないわ、せめてポンコツって言いなさい」
まつげ
「ポンコツも良くないのでは?」
あご
「響きが可愛いじゃない?私の後輩に『ポンコツのポン子』っているわよ?」
まつげ
「……なにそのキャッチフレーズ」
あご
「あなたで言うと『マスカラのまつげ』ね」
まつげ
「それ全然キャッチフレーズじゃない」
あご
「私で言うと……」
まつげ
「『あご出汁のあご』ですかね?」
あご
「……私で取ったダシ飲みたいの?」
まつげ
「要りません」
第一印象覚えようぜ 終わり