Dream-Nursing

世の中の看護師さんに発信したい、自分で学んだ文献などを記載する備忘録。看護師さん〇〇しようぜ!

呼吸回数をどう活用する?②

呼吸回数を測定するようになったけど、この情報をどうしたらいいのかわからん。

 

という方もいると思うので、個人的な活用方法を紹介します。(あくまで個人的なものです。)

 

以前お伝えしたのは、呼吸回数(というかバイタルサイン)を使用して以前の値との比較をし、患者評価をするということです。

 

まぁ救急とかは直近の数値がないこともあると思うので一概には言えませんが……。

 

前回と比較して

 

①変化なし

②増えた(頻呼吸)

③減った(徐呼吸)

 

の三択で患者評価をする事になります。

 

そして、頻呼吸を認識したら、何が原因かをざっくり考えてみましょう。

 

まず考えるのは低酸素血症ですね。

 

❶酸素がいつもより身体に必要になったから呼吸回数を増やして取り込む量を増やしている。

 

という認識です。

 

次は高二酸化炭素血症。

 

二酸化炭素がいつもより身体に溜まっているから、呼吸回数を増やして捨てる量を増やしている。

 

という認識です。

 

更に代謝性アシドーシスの代償。

 

❸身体のpHをアルカリに傾ける要因のHCO3-が減りすぎて、結果的に身体が酸性に傾いている為(代謝性アシドーシス)、身体の酸性の要因になるCO2を捨てて酸塩基のバランスを取る。

 

という認識。

 

そして、呼吸中枢の興奮。

 

痛み、辛い、不安などの不快な刺激で呼吸中枢が興奮

 

という認識。

 

頻呼吸を見たら、この4パターンを思い浮かべられるようにしましょう。

 

はい!

 

 

 

 

 

 

……

 

……

 

……

 

……

 

……覚えましたか(笑)?

 

参考文献

 

 

原因を物理的に除去?:SSCG2021

Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021 | SpringerLink]

SSCG2021続き

 

27. For adults with sepsis or septic shock, we recommend rapidly identify‑ ing or excluding a specific anatomical diagnosis of infection that requires emergent source control and implementing any required source control intervention as soon as medically and logistically .

 

27.敗血症または敗血症性ショックの成人の場合、 感染源の管理を必要とする場所を迅速に特定または除外し、 医学的および戦略的にできるだけ早く必要な感染源管理介入を実施 することをお勧めします。

 

さて、今回は感染が疑われる場所への介入に関してです。

 

敗血症といえば全身の臓器に影響が出ていることを想像しますし、 実際そうなのですが、だからといって感染源、 つまり敗血症を起こす原因になった場所をしっかり探し出して介入 する必要があります。

 

つまり原因をそこから排除するのです。

 

その原因の場所には、膿があるかも知れないし、 壊死組織があるかも知れないし、 医学的に必要と考えられて使用されていたデバイスの存在もあるか も知れません。

 

それを根本的に取り除く介入を行いましょうという提案です。

 

具体例も挙げられています。

 

感染病巣には腹腔内膿瘍、胃腸穿孔、虚血性腸または軸捻転、 胆管炎、胆嚢炎、閉塞または膿瘍に関連する腎盂腎炎、 壊死性軟組織感染、他の深宇宙感染(例えば、 蓄膿症または敗血症性関節炎) 、および移植されたデバイス感染が含まれる。

 

そしてこれらの介入は、可能な限り早く(6~12時間以内) することで生存率をよくする事に繋がると示唆されているようです 。

 

感染源の管理が出来ていなかったり遅れてしまったりすると、 敗血症に必要である適切な循環動態への介入や抗菌薬の投与が行わ れていても患者の状態が改善・安定化しないことが予想されます。

 

つまり問題の原因を根本的に取り除かないと対照的な治療をやって も解決にはならないということですかね。

 

介入自体はメリットとデメリットの比較や専門医の判断、 成功率の高さなどを踏まえて判断されますが、 最終的には開腹などの外科的な介入を考慮します。

 

原因を取り除き(感染巣排除)、影響の残る感染症周辺への介入( 抗菌薬投与などの敗血症治療)をする。

 

「アタマを潰してから雑魚を叩く」的なRPGでいうボス戦の戦略 みたいな・・・。

 

でも実はボスだと思っていたやつが実はカモフラージュで本当は雑 魚みたいなナリのあいつが真のボスって話も・・・。

 

・・・あ、全然違いますね。ハイ。

呼吸回数をどう活用する?

呼吸回数を測定するようになったけど、この情報をどうしたらいいのかわからん。

 

という方もいると思うので、個人的な活用方法を紹介します。(あくまで個人的なものです。)

 

呼吸回数を測定したら(というかバイタル測定をしたら)

 

頻呼吸、徐呼吸(多すぎ、少なすぎ)を判断します。

 

次に前回や前日のデータと比較です。ここで変化の有無を確認します。

 

日々の検温で部署によっては他の観察項目があるかもしれませんので、そこで聴診や、胸の動き、努力呼吸の有無も確認します。

 

……これだけです。

 

大して特別な事はありません。

 

体温も血圧も脈拍もSpO2も、評価としてはこんなものではないでしょうか?

 

呼吸回数を情報として活用するのに、そんなに身構える必要はありません。

 

状態悪化への感度が高いといっても、呼吸回数は良くも悪くもバイタルサインの一つです。

 

呼吸回数だけ特別扱いしないで下さい(笑)

 

バイタルサインでの評価ってスクリーニングの一つですよね。

 

バイタルサイン全体を統合した患者評価が、緊急度、重症度を判断する一番の指標になると思っています。

 

その感度を高めるためにも、是非呼吸回数の測定をしていきましょう。

 

(いや、まぁこんな私以外でもっと有意義な呼吸回数活用してる人沢山いるでしょうけど……)

呼吸回数測定でよくある質問

Q①呼吸回数を測定することで得られる情報は?

→回数の増減で、

低酸素の有無の予測、

換気の評価、

交感神経or副交感神経の優位の予測など

 

回数測定の過程で、

努力呼吸の有無、

異常音の有無、

呼吸補助筋の動きの評価など

 

Q②全患者測定する必要ある?

→じゃあなんのバイタルサインなら全例測定するの?

それはどうやって必要があると判断したの?

 

Q③呼吸回数測定って時間がかかるよね?

→血圧測定にかかる時間は?

体温測定にかかる時間は?

スポットでのSpO2測定にかかる時間は?

これらと比較して、呼吸回数測定は本当に時間がかかる?どのくらい余計に時間がかかる?それは業務に致命的なほど?

 

Q④なんで呼吸回数を特別扱いしてるの?

→「急変前の変化として感度が高い」的な根拠がいくつかある……のは置いておくとして。

 

別の視点だと、“バイタルサインの一つなのにわざわざ無視して測定しないのは逆に呼吸回数を特別扱いして測定してないってことにならない?なんで特別扱いして無視してるの?”

 

Q⑤呼吸回数だけで患者評価なんて無理でしょ?

→無理です。呼吸回数だけで患者評価をしようとしているのではなく“呼吸回数も含めて患者評価をしよう”との提案です。

 

Q⑥呼吸回数は機械で測定してないから正確じゃないんじゃ?

→では、機械で出した他のバイタルサインは本当に正確ですか?本当に適切な方法で機械を活用して出来てますか?

 

 

体温計は機械になり、脈拍も、SpO2も、血圧も測定は機械で出来ます。

 

しかし、未だに呼吸回数は機械での正確な測定は困難です。

 

そのことはデメリットだけでしょうか?

 

※「バイタルサインは体調の悪い時のみ測定すれば良い」と考えてる方とは話が噛み合わないと思うので大丈夫です。

勉強したくない人にこそお勧め。

誤解を恐れずに言うならば、

 

患者評価のABCDEアプローチとACLSは所謂“意識が低い系看護師”にもとてもお勧めです。

(この意識高い系低い系という表現が私は嫌いですが)

 

というか、仕事関係の知識を学ぶ事に積極的じゃない人にこそお勧めです。

 

何故なら、ある程度の動き方や情報の集め方が型として確立しているからです。

 

ACLSなんてアルゴリズム化されているし、

 

(知らなければACLSアルゴリズムで調べてみてね)

 

ABCDEアプローチは集めた情報を使ったアセスメントという意味では幅が出ますが、

 

情報自体がまとまったものであれば、そうそうとんでもない患者評価にはならないでしょう。

 

Aの問題ならAに介入、

 

Bの問題ならBに介入、

 

Cの……

 

というように優先順位に沿って介入を決めていくという流れです。

 

他に余計な事を考えるよりは、

 

このアプローチの仕方を磨いていく方がよっぽど患者の状態変化に気づく事が出来る様になると思うんですが……

 

どうでしょうか?

 

自分は最低限の仕事さえ出来れば良いと考えている方や

 

仕事は仕事だから必要最低限の学びしかしたくないと割り切っている方に是非お勧めします。

 

 

ちなみに、これ“だけ”やってれば患者が必ず助かるという意味ではありません。

 

患者が助かる率を少しでも高めたいので有れば、

 

この患者評価周辺の知識を深めていかないと無理です。

 

ですが、最初から闇雲に知識を求める事をしていくよりも、

 

ここから派生して知識を深めていった方が

 

基礎的な部分が確立された上での学びになるので効率も良いと思います。

多剤耐性菌にも勿論注意!:SSCG2021

Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021 | SpringerLink]

SSCG2021続き

 

19. For adults with sepsis or septic shock and high risk for multidrug resistant (MDR) organisms, we suggest using two antimicrobials with gram‑negative coverage for empiric treatment over one gram‑negative agent.

 

20. For adults with sepsis or septic shock and low risk for MDR organisms, we suggest against using two Gram‑negative agents for empiric treatment, as compared to one Gram‑negative agent.

 

21. For adults with sepsis or septic shock, we suggest against using double gram‑negative coverage once the causative pathogen and the susceptibilities are known.

 

19.敗血症または敗血症性ショックがあり、多剤耐性(MDR) 菌のリスクが高い成人の場合、グラム陰性菌をカバーする1種類の 抗菌薬よりも経験的治療にグラム陰性菌をカバーする2種類の抗菌 薬を使用することをお勧めします。

 

20.敗血症または敗血症性ショックがあり、MDR菌のリスクが 低い成人の場合、1つ抗菌薬と比較して、経験的治療に2種類のグ ラム陰性菌への抗菌薬を使用しないことをお勧めします。

 

21.敗血症または敗血症性ショックの成人の場合、 原因となる病原体と感受性がわかったら、2種類のグラム陰性菌へ の抗菌薬を使用しないことをお勧めします。( 病原体と感受性を踏まえた抗菌薬に変更する)

 

久しぶりですが、SSCG2021の続きです。

 

世界では前回も少し触れたとおり抗菌薬に対する耐性菌が問題にな っています。

 

なので闇雲に広域抗菌薬を使用することは、 感染症治療に関してはあまり褒められたものではありません。

 

しかし、敗血症は時間との勝負であり、 抗菌薬の投与の遅れが患者の転帰に悪い結果を与えることが多々あ ります。

 

そこで提言19になります。

 

異なる作用機序の抗菌薬の投与を勧めるということだと思います。

 

まだ、 原因菌が確定されない状況ではエンピリックな治療を開始し更に、 耐性菌が原因である事も考慮して、異なる作用機序の抗菌薬を2種 類投与することを検討する。

 

もちろん、耐性菌が原因菌になっているリスクが低いと判断すれば 2種類使用せずとも良い(提言20)

 

また、感受性と原因菌がわかればそれを踏まえた抗菌薬に変更を( 提言21)

 

という、 結局感染症の基本的な考え方を再確認して治療に当たるというよう なことが述べられているだけのような気もします。

 

しかし、グラム陰性桿菌の種類の広域抗菌薬でカバーすることは、 敗血症性ショックを伴う耐性菌のリスクが高い患者にとって重要な ようです。

 

何事もメリハリが大切なんですね。

状態変化から急変対応の最低限のラインってどこ?②

さて、前回の内容の患者評価の情報提供をスタッフにしたところ、

 

「脈拍の有無でACLS or ABCDEアプローチの二択に分ける必要があるのか?」

 

という質問がありました。(ACLSだけで良いのでは? という意味)

 

個人的には、このABCDEアプローチの先こそが一般病棟看護師 に必要な患者評価の情報だと考えていたのですが、

 

他のスタッフにとっては患者の状態悪化=ACLSが必要な状況と いうような認識だったのでそこにお互い齟齬があったようでした。

 

患者の状態悪化は心停止~ 痛みの訴えといったものまで幅広いものを指しており、

 

それに対する看護師の必要な介入を識別するための情報収集ツール兼行動のカンペみたいなものという説明をしたのですが、

 

あまりピンときてもらえずでした。

 

「患者の状態悪化とか急変とかはACLS周りの知識があれば十分」という認識なのかも知れません。

 

ACLSはむしろ心停止してからじゃないと役に立たない( 言い過ぎ?)ので、 その手前のツールの方が一般病棟看護師には需要があるんじゃないかと考えた末の情報提供でしたが、

 

スタッフ間の患者評価の認識の差は考えていたよりも大きいなという印象を抱きました。

 

特に「医師が持つような知識まで看護師が持つ必要はあるのか?」

 

という根強い意見があったので、

 

「 患者がやばいかやばくないかを看護師が判断出来れば医師への報告 も遅れることが無くなるのではないか? その判断基準のツールとして活用してもらえれば」

 

という説明をしました。

 

しかし「RRT(Rapid Response System) への報告基準もあるのにこれを活用する必要があるのか?RRTで 十分ではないか」との意見があったので、

 

「RRTの基準と矛盾するものでは無いので、 可能なら一緒に活用してくだされば良いのではないか」

 

と説明しました。

 

すると「 こういうのを患者評価で実施すると決定事項のようにしてしまうと 、 逆にこれ以外の情報を取らないという思考停止になってしまわない か?」との意見があったので

 

「確かにそうなってしまう可能性はゼロではないが、 その理屈で言うとRRTの報告基準に対しても同じ事が言えるので RRTの基準を受容するのに今回のABCDEアプローチを受容し ないのは何故なのか?」

 

と言う質問をしたところで、上司からストップがかかり、 後日に議論が持ち越されました。

 

ん~・・・ここまで言われて、 果たしてこの情報提供に何か意味があるのかを考えたくなりました (笑)