特殊な身体所見使ってみようぜ(呼吸苦を発見④)
腹部―頸静脈テスト(Abdominojugular reflux)
内臓の静脈血を心臓の方へ移動させ、静脈還流を増加させる手技
問題なければ中心静脈圧はこの手技では変化しない。(もしくは、1~2拍上昇してからすぐに正常に戻る)
これは前負荷を増加させた時にそれを処理できる余力が心臓にあるかどうかを観る手技
方法
腹部中央を手で強く(35mmHg)圧迫し、頚静脈を観察する。
10秒以上+3~4cm以上上昇すれば陽性と判断。
圧迫を解除したときに頸静脈圧が下がるのを確認すると確認しやすい
(お腹を圧迫して頚静脈上端が上がった場合、その上がった頚静脈の上端と圧迫解除した後の頚静脈の上端の落差が3〜4cm以上かどうかを判断)
意義
腹部―頸静脈テスト陽性は呼吸困難を持つ患者の重要な所見であり、呼吸困難の原因として左心系の心疾患が関与していることが示唆される。
Valsalva反応
Valsalva反応→Valsalva手技中の怒責相、および怒責解除後の解除相の両相における血圧と脈拍の変化を指す。
(Valsalva手技→息を吸って声門を閉じ、そこに向けて強制呼気(息こらえ、怒責))
方法
血圧測定時、収縮期血圧よりも15mmHg高くカフを巻き、息こらえ(怒責)を10秒してもらってから楽にしてもらう。息こらえ中のKorotkoff音と息こらえ解除後のKorotkoff音の変化を確認する。
正常なValsalva反応は4つに分けられる。(Ⅰ相Ⅱ相は息こらえ中 Ⅲ相Ⅳ相は息こらえ解除後)
第I相では上昇した胸腔内圧が直接大動脈に伝達され、収縮期血圧が一時的に上昇する。
→Korotkoff音 聞こえる
第II相では息こらえが続いているために静脈の灌流が減少し血圧は低下する。
→Korotkoff音 聞こえない
息こらえ解除直後の第Ⅲ相では肺動脈に血液が一時的に貯留されて血圧はさらに低下する。
→Korotkoff音 聞こえない
第IV相血圧が標準値以上になるがその主な原因は先行する低血圧に対する反射的な交感神経の興奮。
→Korotkoff音 聞こえる
息こらえをやめて少ししてから(第IV相で)Korotkoff音が聞こえるのが正常
しかし、心不全では静脈還流量が増えても血圧が高くならないので、息こらえ後の第IV相のKorotkoff音が聞こえない。
もし、息こらえをしている間も(Ⅰ相〜Ⅳ相までずっと)Korotkoff音が持続していた場合、NPPVでPEEPをかけている状態と同じであり、これで循環動態が安定するような心不全だと言うこと・・つまり、より一層重症な心不全であることを示唆する。
参考文献